1964年7月、熊本県玉名市。大きな黒鞄を下げた太縁眼鏡の男が、死刑囚冤罪救援活動をしている福岡刑務所教戒師の篠川禎淳を訪ねた。篠川は、弁護士川村角次の名刺を出し、中央の高名弁護士に依頼されてやって来た、その男を歓待する。しかし、末娘の由理は、手配写真で見た凶悪犯西口彰であると直感する。
ストックホルムから数百キロ離れたバルト海の沿岸に、ポツンと建っている古い家があった。住人は主人のフレデリック、後妻のエリザベート、前妻の息子ヤール、娘のシャルロッテ、そして女中のイルマの五人だった。フレデリックは妻の目をかすめてはイルマを抱いた。エリザべートは夫の不倫に素知らぬ顔をしながら、義理の息子ヤールの若い肉体をむさぼっていた。こうした四人の淫蕩な生活にシャルロッテは悶々の日を送っていた。
ある夜、三人の闖入者、脱走兵が現われた。囚人服を着たウルフ、グンナー、パールの三人で、彼らは刑務所から脱走して銃砲店から銃と弾薬を奪い、逃げてきたのだった。
婦女暴行の前科を持つグンナーは、家人の前でイルマ犯し獣欲を満たした。ウルフは女には眼もくれなかった、パールと関係があったのだ。
ウルフがここに逃げてきたのには理由があった。刑務所に入れられる前に大金を近...
ここは横浜の寿町。もう60歳はいくつか過ぎた浮浪者の弦一郎は、港湾労働者の青年晴男に「息子になってくれ」と言い寄っていた。晴男の兄貴分でサラ金業の幾雄は、この話に興味を持って弦一郎に事情を聞くと、弦一郎は半年前にゴミと一諸に三百万円の大金を拾ったのだが、その金で以前からの夢だった、戦災で亡くした息子と暮したい、たとえ仮の息子でもいい、普通の家庭を持ちたい、というのだ。幾雄は「弦一郎に五千万円の保険をかける。お前が受取人になるんだ。心臓が弱そうだから心臓に負担になるようなことをやればいいんだ」と気のり薄な晴男を承諾させてしまった。息子ができたら連れ合いが欲しいと弦一郎は、ヤリテ婆のナツを選び、さらに晴男に惚れているおカマのキーコが妹に志願してきた。そして晴男は、事情を全く知らない正太郎という子連れの保母百合子と結婚。これで弦一郎の夢だった“一般家庭...
父の残した莫大な財産で何不自由なく幸せに暮す一彦と盲目の妹綾子。そして盲導犬のジョロニモ。一彦が響子と結婚式をあげた矢先、新婚の響子が蒸発してしまう。半年後、医師稲葉に伴なわれて響子が姿を現した。記憶喪失にかかっており過去の記憶はまるっきり無かった。しかも夜の行為の激しさは驚くべき大胆さになっていた。ある時は綾子の前でさえ…。失踪前の響子とはまるで別人のようだった。盲導犬ジェロニモは、戻った響子を受け入れずに激しく吼えつくばかりだ。綾子は、今いる響子は以前の響子とは別人ではないかと疑問をもつ。しかし一彦にこのことを言っても信用されなかった。奇妙なことに、壁にかけた響子の写真が醜く崩れているのだった。
ある日、一彦は響子が公衆便所の中で売春しているのを目撃してしまう。快楽の悦びに悶え、自ら腰をふり絶頂に達していく響子。この事を責めると、響子は意外なこと...