何不自由のない妻の座が急に空虚に感じられた時、亜紀はフト夫の賢行が自分の全く知らない生活を持っているのではないかと思った。早速、亜紀は夫のいる軽井沢へ出掛けた。が、夫はゴルフに疲れて寝ていただけだった。その帰途、亜紀は乙枝と信子という若者に逢い信子を乗せて帰った。一方、賢行は偶然にも亡くなった白友の妹、時津美沙子にに会った。賢行は美しく成長した美沙子に女を感じ、美沙子は賢行をいつしか男性の理想として見るようになっていた。こうした二人の感情を何も知らない亜紀は、ホテルのロビーに賢行を尋ねて来た美沙子に逢い本能的に反発していた。ある日、街角で乙枝とバッタリ逢った亜紀は、彼の友人である彫刻家、巽魚次郎を紹介された。そして、巽と美沙子が遠縁に当ることを知った。亜紀は夫と全く違ったタイプの巽に次第に魅かれて行った。そして、二人で古木を見て回ったり彫刻展へ行った...
美しい四人の姉妹とその夫たち、そして次女の夫の愛人たちが織りなす様々な人間関係を描いた瀬戸内晴美の同名小説の映画化。脚本は「ノストラダムスの大予言」の八住利雄、監督は「恍惚の人」の豊田四郎と「吾輩は猫である」の市川崑による共同演出、撮影は「雨のアムステルダム」の岡崎宏三と、長谷川清がそれぞれ担当。
宮中へ御料紙を納めていたほどの老舗の桑村紙店の長女安澄は、大恋愛のすえ京都を飛び出して、現在は着物のデザイナーとして東京に店を持ち、末娘の耀子を養女にして暮している。姉に代って、店を継いだのは次女の優子だが、経営は夫の政之の力に寄るところが大きい。だが、彼は女ぐせが悪く、最近も秘書の前田英子と関係ができ、この事が優子に知られるや、彼女を東京に囲ってしまった。三女の乃利子は、真面目なサラリーマンの卓に嫁ぎ、平和な生活を送っていたが、そろそろ安穏な生活に飽き...
作家の千倉磊吉の家は京都にあった。この京都から伊豆山に移り住んだが、その間、何人ものお手伝さんが変った。これはそのお手伝さんの行状記である。初は戦前派の典型的な女中だった。半農半漁の貧しい家に生まれ、千倉家に来た。初の青春はこの家ですぎてしまい、結婚の経験もなかった。磊吉夫婦の世話で薬局の主人花村と見合いをしたが、初の姉の口ききで結婚してしまい、磊吉夫婦を失望させた。梅は初と同郷の酒好きで朗らかな性格だった。そして漁師である初の弟安吉と結ばれ千倉家を去って行った。駒は京都の出身で大変なグラマー、ゴリラの真似とフラダンスが大の得意、奉公が勤まらなければ家に帰っても入れてもらえないというので、一心に働いている気だての良い女だった。初、梅が去った後も駒は長く千倉家に残った。磊吉達は京都から伊豆山へと移った。鈴は大津の生まれ、中学を出ているせいか勉強家で、磊...
時任謙作(池部)には出生の秘密があった。謙作は、父(中村)のドイツ滞在中、母(文野)と祖父との間に生まれた子供だった。幼馴染の愛子との縁談がご破算になったのも、この事が原因であった。
そんな彼は、放蕩を重ねる荒れた生活を送るようになった。謙作は、祖父の死以後、その妾であったお栄(淡島)と2人で暮していた。やがて、お栄を女として意識するようになっていた。
年齢も上で、実際には父であった祖父と交渉のあったお栄に、そんな気持を抱くようになった自分を持て余した謙作は、旅行に出ることを思い立った。
そこで彼は、尾道へ行くことにした。そして、謙作はお栄との結婚の決心を兄の信行(千秋)に書き送った。その時に、始めて出生の秘密を知らされたのである。
謙作の父はこの結婚話に激怒して反対し、お栄も謙作の申し出を固辞した。それを知って、彼は再び東京を去り京都へ向かった。
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