2019年4月東京秋葉原の飲食店で、あるドラマの打ち合わせが行われていた。出演者は俳優の佐藤二朗。
そのドラマというのは、テレビ愛知が社運をかけたプロジェクト、「行きたくない街No.1」という不名誉に2回連続で輝いてしまった名古屋をイメージアップさせようというもの。その主演にと白羽の矢が立ったのが、愛知県出身の佐藤二朗なのだ。
佐藤はこのプロジェクトの相棒に、15年前他局ではあるが名古屋を題材としたドラマで共演した経験のある俳優斎藤工を担ぎ出す。
ところが佐藤二朗、愛知県出身ではあるが名古屋のことをよく知らないということが判明。「ういろう」を食べた記憶はあいまい、「あんかけスパ」に至っては一度も食べたことがないという。そこで、より良いドラマを作るためにも、まずは自身が名古屋のことをよく知る必要があると、斎藤を道連れに名古屋へリサーチの旅に出る…。...
「KATACHI」で長編デビューを飾った堂野アキノリの長編2作目となる「右へいってしまった人」。実在する巨大シェアハウス“オークハウス”を舞台に据え、パラレルワールドをテーマにしたラブストーリーが紡がれる。現在40歳の主人公鷹介は、仲間と海へ遊びに行った28歳の夢を連夜見ていた。当時は車を左の駐車場に停めたが、夢の中では右の駐車場に停める。そのため、同じシェアハウスで暮らしており、別のグループで海に来ていた若かりし頃の妻水帆とは出会わない。あるとき、同じ夢を見た鷹介は目覚めることなく、そのままパラレルワールドへと迷い込んでしまう。しかし車を右の駐車場に停めたため、水帆はその世界線上では鷹介の親友修二と付き合う。鷹介は大切なものが何かを気付かせられる日々を過ごしながら、当時目指していた音楽家への道にもう一度挑戦することになる。