昭和十八年。戦局はすでに日本の不利に展開していた。父の戦死の報をうけた浜村真吉は嘆く母や恋人の三保を残し、学友の田川や内藤とともに土浦の海軍航空隊に志願した。土浦での苛烈な規律と訓練のなか、田川が練習機で墜落死した。やがて、同期の桜たちとともに、海軍飛行少尉を拝命した真吉は鹿屋基地に配属された。ここでの特攻教育はさらに厳しいものだった。その頃、三保が真吉に逢いたい一念で、准看護婦として、海軍病院へやってきた。彼女の烈しい愛に、真吉は困惑したが愛するがゆえに不幸にすることはできないと、出撃するのだった。だが、皮肉にも彼の機は故障し、傷ついて病院に運びこまれてしまう。病室の窓から次々と飛び立つ特攻機をみることや、懸命に看護する三保の存在は真吉に重くのしかかった。傷が癒えた真吉は、歴戦の勇者秋山少佐の部隊に編入された。この部隊の機はすべて母機を離れたら最後...
元刑事で開店休業中の私立探偵仁賀丈太は、通称“猫"と呼ばれている。彼の息子タケは父親の借金のカタに、ララが経営するオカマバーでバーテンをさせられていた。ある日、タケがひとりで店番をしている時に、総会屋の鷲尾とチェーンソーを持った鷲尾の舎弟富士丸が店に押し入る。タケはビビる風もなく見事な手さばきで鷲尾の首に包丁を突きつけ、その物腰から鷲尾は、彼が猫の息子であることを悟った。一方その頃、猫のもとには元ヤクザの私立探偵長田が訪れていた。彼はある汚職政治家にゆすりをかけている一味の正体を調査中で、それを猫にも手伝って欲しいと頼む。だが、愛人冴子とよろしくやっている猫はその申し出を断ってしまった。せっかくの仕事の依頼を断った父親をついに見限ったタケは、鷲尾の下で働くようになる。鷲尾は家出少女や富士丸などに何不自由ない生活を与え、疑似家族を作っていた。...