予想屋の源三や早川が一目をおくほど競馬通の河辺は、会社では平凡なサラリーマンとして日々を送っていた。ある日、競馬場で知った峯岸という男をコーチして十六万円を儲けさせたのだが、実は峯岸は河辺の会社の新社長だったのだ。競馬に凝った峯岸は早速、河辺を秘書室付きに任命して、競馬データの収集をやらせた。河辺の妻みちえは、夫の安月給を補うため歯科医をやっているが、いままで堅く禁じていた競馬で河辺が出世してくれれば、と自らも競馬の研究を始めたのである。ところが、みちえの競馬熱が昂じるにつれて、河辺は競馬に興味を失っていった。競馬は自分の命の次に大切な金で儲けるから面白いので、社長のためにビジネス化されては面白味がない、と河辺は思っていたのだ。そんなあいだに峯岸は、次第に競馬に自信をつけていたが、ある日、大阪へ出張するため、三十万円を河辺に渡して大レースに「3-7」...
海山千吉は正体不明の男だが暗黒街では「地獄の魔王」と恐れられていた。この千吉がある港町で麻薬の大取引きがあることを嗅ぎつけ相棒探しにのりだした。ボスの身代りで北海刑務所に服役中だった熊次は迎えにきた青野、小崎らと港町に向った。ボスが消された後、陣手が縄張りを仕切っていたが、青野らは千吉を新ボスと仰いでいた。熊次もまた千吉の部下となり、陣手にひと泡吹かせようと考えていた。千吉は芝居を打った。陣手は計略に乗りクラブを共同で経営することを約束させられた。だが陣手の裏に黒幕ありとにらんだ千吉は、陣手の動きを監視した。そして市長が公民館に単身姿を現わす事実を知った千吉は市長を連れ出した。市長には幼ない頃、呑んだくれの父を殺した過去があり、成績優秀の彼に代り弟が罪をきた。しかし兄弟が成長した時、弟は暗黒街のボスになり市長のいる東南市で思うがままの悪事を働いていた...
菊池寛の原作から「楊貴妃」の依田義賢が脚本を書き「花ざかり男一代」の森一生が監督する。撮影は「楊貴妃」の杉山公平、音楽は「おえんさん」の斎藤一郎の担当。「つばくろ笠」の長谷川一夫、「楊貴妃」の京マチ子、「あした来る人」の小沢栄、「八州遊侠伝 源太あばれ笠」の柳永二郎、「伊太郎獅子」の三田登喜子、猿之助劇団の女形市川松蔦などが出演する。
スタッフ
監督 森一生
製作 永田雅一
原作 菊池寛
脚本 依田義賢
企画 辻久一
撮影 杉山公平
音楽 斎藤一郎
美術 伊藤熹朔
録音 海原幸夫
照明 加藤庄之丞
キャスト
坂田藤十郎 長谷川一夫
お梶 京マチ子
都万太夫 進藤英太郎
近松門左衛門 小沢栄
吉介 加東大介
金子吉左衛門 小川虎之助
おその 三田登喜子
万次郎 夏目俊二
霧浪千寿 市川松蔦
宗山清兵衛 柳永二郎
中村四郎五郎 天野一郎
沢村長十郎 尾上...